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てっとうのかいじん

鉄塔の怪人/海底の魔術師

江戸川 乱歩

江戸川乱歩『鉄塔の怪人/海底の魔術師』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鉄塔の怪人、海底の魔術師。

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 160,770 字 · 322 页

青空文庫

近田、きみはベルをならすまで、用事はない。あっちへ行っていなさい。」

と、なるほど、ふきげんらしい声です。

中にはいってみますと、写真でおなじみの明智探偵が、きょうも黒い背広をきて立っていました。明智は、広田が、部屋にはいるのを待って、ドアに、ピチンとかぎをかけました。そして、正面の大デスクのむこうがわにまわると、そこのいすに、どっかりこしかけて、客には、「おかけなさい。」ともいわず、だまって、こちらをにらみつけています。

広田は、ていねいにおじぎをしてから、デスクの前のいすに、おずおず、腰をおろしました。

「どんな用件だね。」

いつもニコニコしている明智とはちがって、まるで、にがむしをかみつぶしたような顔です。

「電話では、くわしいことを、お話しなかったとおもいますが、じつは、このごろ、新聞でさわいでいる妖虫事件です。」

妖虫事件といえば、名探偵は、きっと、ひざをのりだしてくると思ったのに、いっこう、そんなようすも見えません。

「うん、それで。」

と、さきをうながすばかりです。

そこで、広田は、ゆうべのできごとを、くわしく話しましたが、明智は、なにをきいても、すこしもおどろかないのです。