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『はちのこ』から『ごちゅうあん』まで
『鉢の子』から『其中庵』まで
種田 山頭火
「「三八九」復活第四集」1932(昭和7)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,548 字 · 10 页
樹明兄は喜んで万事の交渉に当ってくれた。
屋根が葺きかえられる。便所が改築される(というのは、独身者は老衰の場合を予想しておかなければならないから)。畳を敷いて障子を張る。――樹明兄、冬村兄の活動振は眼ざましいというよりも涙ぐましいものであった。
昭和七年九月二十日、私は其中庵の主となった。
私が探し求めていた其中庵は熊本にはなかった、嬉野にも川棚にもなかった。ふる郷のほとりの山裾にあった。茶の木をめぐらし、柿の木にかこまれ、木の葉が散りかけ、虫があつまり、百舌鳥が啼きかける廃屋にあった。
廃人、廃屋に入る。
それは最も自然で、最も相応しているではないか。水の流れるような推移ではないか。自然が、御仏が友人を通して指示する生活とはいえなかろうか。
今にして思えば、私は長く川棚には落ちつけなかったろう(幸雄兄の温情にここで改めてお礼を申しあげる)。川棚には温泉はあるけれど、ここのような閑寂がない。しめやかさがない。
私は山を愛する。高山名山には親しめないが、名もない山、見すぼらしい山を楽しむ。
ここは水に乏しいけれど、すこしのぼれば、雑草の中からしみじみと湧き出る泉がある。