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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、随筆銭形平次。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 页

青空文庫

「ホ、ホ、ホ、ホッ、ホッ」

女はいきなり笑い出しましたが、麻布中の空気を薫蒸するような笑いです。

「何が可笑しい」

ガラッ八は弥造を肩のあたりまで突き上げて、拳骨の先から相手の女を睨め廻します。

「だって、御用繁多な方が、一軒一軒菊細工を覗いて、一刻半(三時間)も油を売ってるんですもの」

「何?」

「その癖、お茶も呑まずに引返すじゃありませんか。良い御用聞がそんな心掛けじゃ、世間が穏やかなわけねえ」

「…………」

ガラッ八は弄ばれているような憤懣と、妙に腹の底からコミ上げてくる愉悦を感じました。女の調子には、皮肉な色っぽさがあって、羽根箒で顔中を撫で廻されるような心持だったのです。

菊細工はまだ麻布の狸穴坂の両側を本場にした頃、ガラッ八は飯倉へ用事で来たついでに、ここまで足を伸して、千輪咲や原始的な細工物や、百姓家の畑に育ったままの菊を眺めて、引返したところを妖かしの網に引っ掛ったのでした。(註 菊細工の本場は文化以後、染井、巣鴨に移り、弘化年間に根津、谷中、駒込を中心として精巧な菊人形に進化し、一時中絶して、明治十年頃団子坂の菊人形に復活したのです)

「ね、八五郎親分、洒落や冗談じゃありません、――人一人の命に拘わる事なんだから、聴いて下さいな」