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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
野村胡堂『銭形平次捕物控(二)八人芸の女』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,562 字 · 291 页
兄と言うのは、どうせ偽りだろう」
「…………」
殿様は妙に下情に通じております。
「その浅五郎が、昨日向島の土手の上をウロウロしているのを見た者があるのだ」
「どなたが?」
平次はツイ釣られるともなく口を容れました。
「矢吹狷之介というてな、――奥の弟じゃ」
「えッ」
「奥の嫉妬から無い事を告げ口させる――というような疑いもあるだろうが、それは大丈夫だ。狷之介はまだ十九歳、一本気の男だ」
「それにしても殿様、堤の上から、船の中の人の眼玉を射るのは容易の腕前ではございません。何の某と言う楊弓の名人でもなければ――」
「一応尤もだが、平次、まぐれ当りという事がある」
「ヘエ」
平次も弱りました。三十そこそこで、放埒で、我儘で、悪賢くて、なまじ下々の事に通じていては、およそ扱いにくい典型的な殿様です。
「長命寺境内に叔母が居ると言ったのも、大方嘘であろう。その証拠には、折檻されてから寺島新田と言い直している。恐らく土手の上をウロウロする浅五郎の姿を見かけ、それに逢うために口実を拵えて、一刻あまりも座を明けたに相違あるまい。楊弓で余の眼を射させたのも、二人の談合ずくであろう――たってそうでないと言うなら、浅五郎の住処を言えッ」