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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

200 死骸の花嫁

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页

青空文庫

駕籠の中の花嫁を刺し殺すような野郎は、磔刑か火焙りにでもしなきゃ腹が癒えません」

田之助はそう言いながら、自分の言葉に興奮して、ガタガタと胴顫いをしているのです。待ちに待った嫁、親に無理を言って貰った嫁が、死骸になって来たのでは、全く泣いても泣ききれなかったでしょう。

「あの野郎とは誰のことだ」

平次の問いは冷たく素気ないものでした。

「磯の安松の野郎ですよ、あん畜生は身の程も知らずにお喜美さんを追い廻していました。三文博奕を渡世にしている野郎が、浪人と言っても立派な武家のお嬢さんを――」

「――――」

田之助は身を揉んで口惜しがるのです。

「その上あの野郎は、お喜美さんがここへ嫁入りすると話がきまると、――それが本当なら生かしちゃ置かない――と、お喜美さんへ脅かしの手紙をやったそうで――」

「それをどうしてお前さんは知っていなさるんだ」

平次は反問しました。

「お喜美さんから聞きました」

「嫁入り前の?」

「嫁入りの時には死んでいた人ですもの、嫁入り前に極っています、――私とはもう三月も前から――」

浪人しても武家の娘と威張ったお喜美が、やくざの安松から脅かしの手紙を貰ったり、三月も前から町人の息子と交渉があったということは、この時代としては甚だ穏かならぬことです。