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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

200 死骸の花嫁

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,163 字 · 25 页

青空文庫

「その路地の中には、人が多勢いたのか」

「十五六人は居たようでございます――でも」

お国は何やら言いかけて口を緘んでしまいました。

「場所は」

「仙台様の屋敷横、自身番のところで」

「宇田川町から駕籠に付いて来た人たちは、皆んなその路地の中にいた筈だな」

「いえ、路地の中にいたのは二三人で、あとは往来に踞んでおりました」

百万石も剣菱も袖振り合う――と言われた江戸の街ですが、六十二万石の大藩の主となるとなかなか見識がうるさく、その上仙台屋敷の傍では、土下座をしないまでも、自然江戸っ子にも遠慮があったのです。

「そのとき誰か、嫁の駕籠の傍に近寄った者はないのか」

「そう言えば、芝口のやくざで、磯の安松というのが、ウロウロして居りましたが――」

お国の言葉には、いろいろに取れる意味があります。

「ところで、この守り刀の鞘は何処にあったのかな、――少し泥が付いている様だが」

平次は、血染の短刀と並べてある、螺鈿入りの鞘を取り上げました。よく見ると鞘の外には泥が付いているばかりでなく、鞘の中には、深く血さえ付いているのです。

「花嫁の膝の上にございました」

代って答えたのは、仲人の伊賀屋源六でした。