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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

124 唖娘

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,006 字 · 25 页

青空文庫

「…………」

八五郎もあまりの奇怪な話に口を緘んでしまいました。

「さっそく届出るつもりでいたが、そこは凡夫の浅ましさで、金を見るとついフラフラとした心持になり、五両費い、十両取り、今では半分ほども、費ってしまいました。大坂の山城屋と言ったのは全くの出鱈目、私はやはり江戸の生れで、唯の尺八の師匠竹斎に相違ございません」

「…………」

「穴蔵の中にはまだ二千両近い金が残っております。それをそっくり、親分に差上げましょう、さア」

これほどの重大事を、何の蟠りもなく言ってのけて、滝三郎は手燭を取って先に立ちました。

その後から二三歩廊下へ出た八五郎、

「…………」

後ろからそっと袖を引く者があるのです。

振り返ると小さい妹――痣のあるお雪が、泣き出しそうな顔をして、八五郎を拝んでいるではありませんか。

兄の滝三郎を助けてくれと言うのか、それとも、穴蔵へ行っては八五郎が危ないと言うのか、それは判りませんが、とにもかくにも、八五郎ほどの男も、恐ろしい予感にゾッと身内の顫えを感じないわけには行きません。

「待ってくれ師匠。――そいつは俺が貰うにしても、今すぐというわけには行かねエ。