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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

124 唖娘

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,006 字 · 25 页

青空文庫

――辰は裏へ廻れ、一人も外へ出すんじゃないよ」

「ヘエ」

平次は八五郎に叩かせましたが、いつまでやっていても、中からは返事もなく、開けてくれる者もありません。

「八、戸を打ち壊せ――構わないとも、後は俺が引受ける」

「よしッ」

平次の気組みに励まされて、八五郎はでっかい身体をドシンと雨戸に叩き付けました。

しばらくの骨折りで、どうやらこうやら雨戸を押し倒して入ると、中は何の変哲もなく、あちらこちらに灯さえ点いて人の気配もなく、更けております。

「八、穴蔵へ案内しろ」

「ヘエ」

物置へ行ってみると、床は剥いだまま、灯の用意をして無気味な中へ入ると、穴蔵の樫の戸のところへ、もうプーンと生血の臭い――

「あっ、遅れたか」

差し出した灯の中に、鮮血に染んで斬り殺されているのは、思いきや、主人の竹斎こと滝三郎の無残な姿です。

「あっ」

「八、小判は無くなっているはずだ。見てくれ」

「ありませんよ、親分」

穴蔵の隅の箱は空っぽ、八五郎は呆気にとられているばかり。

「狭い穴蔵の中で、良い手際だ。――これほどの男も、声を立てずに死んだろう」

穴蔵から出て奥の部屋へ行くと、平次が想像した以上の贅沢な調度の中に、姉娘の多与里は、滅茶滅茶に縛られておっ転がされております。