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さっかくすうだい

錯覚数題

寺田 寅彦

「中央公論」1933(昭和8)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,152 字 · 18 页

青空文庫

これは物理的にもなかなかおもしろいものである。ヨーヨーも物理的玩具であるが、あれはだいたいは簡単な剛体力学の原理ですべてが解釈される。しかしこの獅子のほうは複雑な渦流が複雑な面に及ぼす力の問題を包んでいる。飛行機と突風との関係に似ていっそう複雑な場合であるから、世界じゅうの航空力学の大家でも手こずらせるだけの難題を提供するかもしれない。

このおもちゃは、たしかに二十年も前にやはり夜店で見たことがあるから、かなり昔からあるかもしれない。もしこれが日本人の発明だとしたらたしかに自慢のできるものである。事によるとシナから来たかもしれない。玩具研究家の示教を得れば幸いである。

こんな巧妙なものでも、時代に合わず、西洋からはやってこない限りたいして商売にはならないらしい。

二十年前に見た時に感心したのは売り手のじいさんの団扇の使い方の巧妙なことであった。団扇の微妙な動かし方一つでおどけた四角の紙の獅子が、ありとあらゆる、「いわゆる獅子」の姿態をして見せる。つくづく見ていると、この紙片に魂がはいって、ほんとうに二匹の獅子が遊び戯れ相角逐しまた跳躍しているような幻覚をひき起こさせた。