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ながしまのし
長島の死
「紀元」1934(昭和9)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,277 字 · 11 页
そうして私に怖ろしくなったろうと狂気の眼を輝やかして叫ぶので、私があたりまえだと言ったら、世にも無慙な落胆を表わしてそれっきり沈黙してしまった。
併し、正直に白状すると、私はそれほど怖くはなかったのである。彼はその悲惨な宿命として、彼の如何なる激しい意志をもってしても、到底私を怖がらしたり圧迫したりすることは出来ない因果な性格を持っている。私は無神経なること白昼の蟇の如き冷然たる生物であって、デリケートな彼はその点に於て最も敵対しがたいのである。それにも拘らず、彼は私のような蟇の意志、蟇の無神経をもつところの人間を相手として友達に選び、それに抵抗しつつも最も親しまざるを得ない悲劇的な性格を与えられていたのであろう。
私は彼の生前によく彼に言い言いしたのであるが、君は僕に親しむよりも葛巻義敏、本多信、若園清太郎のどれかを選ぶ方がいいのだと。その度に、彼はさらに私に激しく反抗するかのような、蒼白な、表情のない顔をして決して一言も答えはしなかった。
断っておくが、長島と私との間には世間的なライバルとか、恋敵とかいう関係は完全になかった。のみならず、そういう世間的な関係はたとい有ったにしても悲劇的な確執を生みがたい奇妙な和合と温かさがあった。