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とうそう

闘争

小酒井 不木

「新青年」1929(昭和4)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,079 字 · 38 页

青空文庫

のであった。

「緑川はどこに住って居るのかね?」と、毛利先生は警部の説明をきゝ終ってたずねられた。

「北沢家から、四五町へだたったところに小さな文化住宅をかまえ、一人で住んで居るのです」

警視庁へ着くなり、毛利先生と僕とは一室にはいって、緑川の連れられてくるのを待った。

やがて福間警部につれられてはいって来たのは二十四五の、顔の長い、髪の毛の房々とした青年だった。毛利先生は何思ったか福間警部を別室に退かせて、緑川に犯行の模様を語らせた。それは、福間警部が自動車の中で告げたことゝ少しも変らなかった。

「それでは、この机の前で、その時の北沢さんの模様をやって見せて下さい」

と、毛利先生は立ち上って、自分の腰かけて居た椅子を緑川に与え、室の隅にあった薄縁をもって来て床に敷かれた。

緑川はおそる/\椅子に腰かけた。

「さあ、眼をつぶって微睡して居る様子をして下さい。僕がその時のあなたの役をつとめます。よろしいか。そら、ドンとピストルを打った。そこで北沢さんはどうしましたか」

「何しろ興奮して居たから、こまかい動作はよく覚えて居りません。たしか、こういう風に立ち上ったと思います。