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あなんとじゅじゅつしのむすめ

阿難と呪術師の娘

岡本 かの子

「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页

青空文庫

第六場

世尊のおん肌は、張り切った生命の一枚板だ。何と爪の立てよう処もない。

神将のA ――時に今日のいくさは何ういう具合になるのです。

目※(「特のへん+廴+聿」、第3水準1-87-71)連 ――ただの慾情降伏のいくさでなく、敵は子を思う母親のまごころから出て居るのだ。いくさはちと難しくなるかも知れぬ。

(空中の場面に於ける目※(「特のへん+廴+聿」、第3水準1-87-71)連その他諸天神将達が雲の上にて台詞を交し居るうちにも、背景の夜の空はキネオラマ式に移り動き、恰も舞台の人物とそれらを乗せたる雲が空中を飛揚し行くような錯覚を起さしめる。そして台詞終りし時舞台は暗転。)

第六場

(再び呪術師の老女の部屋、既に阿難と娘は毛綱にて縛り上げられ、引据えられて居る。老女はすっかり魔女の姿に変貌して居る。)

老女 ――石か青銅か。石か青銅か。

娘 ――(細れる声にて。)お母さま。待って下さい。

老女 ――石か青銅か、さあどっちだ。どっちなと望みどおり祈り固めて呉れよう。

娘 ――わたしが悪う御座いました。阿難さまを許して上げて下さい。

老女 ――(少しあきれて)え! 何だと?

娘 ――阿難さまの、世にも悲し相なお姿を見て、わたしはもう堪えられませぬ。