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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页
第二場
唯渇いた人間に、同情ある人間が水を与える。――之こそ本当の布施の道に適った行で御座いましょう。
娘 ――有難う御座います、では差し上げさして頂きます。
(娘、わななく手で水甕を差出す。阿難、飲み終り礼して去る。娘、いつまでも阿難の姿を見送る。)
第二場
(舎衛城内広場、餅施行の札が立って居る。阿難、甲斐々々しき姿にて、群がり来る人々に忙がしげに餅を与えて居る。)
乞食甲 ――坊主、おいらに呉れ。
阿難 ――はい。
乞食甲 ――なんだ、一つか。
阿難 ――どなたにも一つずつですよ。
乞食甲 ――けちんぼ。
乞食乙 ――坊さん、うちに伜とかかあが待って居るんだ。三つ呉れ。
阿難 ――只今茲へお見えになる方だけに、一つずつ差し上げることになって居ます。お見えにならぬ方には、後程餅が余った時にまた差し上げますから。
乞食乙 ――勝手にしやがれ。
(その時外道の論師、群集を押し分けずかずかと施行台の前に立つ。群集互に囁き合い乍ら席を開き、何か事の起るを予期する興味にて静まり返る。)
論師 ――貴き御僧。御身に問わん。只今施行するその餅、その性、有か、無か。
阿難 ――失礼ですが今日は議論にお答え致しかねます。