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あなんとじゅじゅつしのむすめ
阿難と呪術師の娘
岡本 かの子
「読売新聞」1928(昭和3)年5月6日~6月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,425 字 · 58 页
あとがき
(この時清風一しきり園林の梢に渡る。精舎には就寝の鐘が鳴る。釈尊は眼を空に転じて暫らく停回した後。)
釈尊 ――ああ。よき今宵じゃ。生命は天涯にまで満ち溢れて居る。わしはこの空に今幾つか新らしく生れる星を知って居る。彼等も矢張り水火の苦難を潜って来たのである。わしは彼等の為に祝福してやらねばならぬ。(釈尊は右手を高く差し延べる。手より白い糸を曳いて居る。)
阿難。摩登伽尼 ――おお。仏のみ手にも糸が! 糸が……。
(この刹那大音響あり。舞台にはこの劇の序幕より以下幕々に出でたる登場人物の殆どが、或は宙釣になり、或は地下よりせり上りつつ現われる。その人物等も手に手に五色の糸を持ち、その端は人物の各及び釈尊、阿難、摩登伽尼の糸にも繋がり、舞台に一面の網状をなす。電気装置によって光輝燦爛たり。宇宙を編む生命網の象徴である。空には今し新星が薄の穂の如く、鋭く幽かに生れつつ在り。幕。)
あとがき
釈尊の男の弟子の中で阿難は愛業の悩みの深かった方である。この劇に取扱った栴陀羅(低い階級)の娘との関係も、彼の愛の受難史の一つである。
但、私が書いたこの劇と経典に記された事実とは随分違って居るのである。