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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
第一に四宮理学士が疑われた。
「貴方はあの時図書室から出てどこにいらしったのですか」
僕は訊いた。
「僕はあの二十分も前に、僕の室へかえっていたのだ。僕さえ図書室にズッと頑張っていたら、いくら僕が弱くてもどうにかお役に立ったろうにと思ってね」と四宮理学士は自分の弱さを慨いたのであったが、僕にはそれが却て老獪に響いた。
「あの前、貴方は階段の背後でなにをしておいででしたか」と僕は痛い所を追求した。
「いやあれは鳥渡……僕の持薬である丸薬を落したから、拾い集めて居ただけなんです」と答えたが、その答えぶりから言ってそれは明らかに偽りであることが判った。
その次に僕は佐和山女史に、それとなく話しかけた。
「貴女は、所長が殺された頃、お席にいらっしゃいましたか?」
「エエ居ました、ずっと前から……。どうして?」
「おかしいナ」僕はあの殺人の三十分位前と思われる頃に、女史があの室に居なかったことを知っている。「それでは、あの事件のあったとき階段を誰かが降りて来る跫音を、お聞きにならなかったですか?」
「さア、存じませんね」
「硝子扉がガチャンと言ったでしょう」
「ちっとも気がつきませんでしたよ」