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おんぼうぼり
隠亡堀
国枝 史郎
「大衆文藝」1926(大正15)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,455 字 · 10 页
玩具のような女だったよ」
「へへえ、そこへ打ち込んだんだね!」
「何しろお岩は古女房、そこへ持って来て子を産みやあがった。どうもね、女は子を産んじゃあ不可ねえ。ひどく窶れてみっともなくなる。肋骨などがギロギロする。尤も金持の家庭なら、一人ぐらいは可いだろう。産後の肥立が成功すると、体の膏がすっかり脱けて、却って別嬪になるそうだからな。ところが不幸にもあの時分、俺等はヤケに貧乏だったものさ」
「でも、殺さずとも可かったろうに」
「ナーニ、手にかけて殺したんじゃあねえ。変な具合で自殺したんだ。尤も自分で死ななかったら、屹度俺は殺したろうよ」
「恨死に死んだんだね」
「お説の通りだ、恨死に死んだ」
「で、只今はお梅さんと、仲宜くおくらしでござんすかえ?」
直助は古風に冷かすように訊いた。
「何さ、お梅も喜兵衛奴も、婚礼の晩に叩っ切って了った」
伊右衛門は斯う云うと苦笑した。
「お梅は何うでも可かったが、持参金だけは欲しかった。伊藤の家庭と来たひにゃあ、時々蔵から小判を出して、錆を落とさなけりゃあならねえ程、うんとこさ金があったんだからなあ」
「だが何うして殺したんで?」
「時の機勢という奴さ」