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おんぼうぼり
隠亡堀
国枝 史郎
「大衆文藝」1926(大正15)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,455 字 · 10 页
バラリと菰を刎ね退けた。
お岩の死骸が其処にあった。
肉が大方落ちていた。眉間が割れて血が出ていた。片眼が瘤のように膨れ上がっていた。
と、死骸が物を言った。
「民谷の血筋……伊藤喜兵衛が……根葉を枯らして……この身の恨み……」
伊右衛門は高尚に反問した。
「ははあ、白は夫れだけで?」
お岩の片眼が大きくなった。
三
「もう是で三回目だ」
伊右衛門は却って気の毒そうに言った。「実際幽霊というような物も、一回目あたりは恐ろしいよ。二回目となると稀薄になる。三回も出られると笑い度くなる。お岩さん不量見は止めたがいい。四回も出ると張り仆すぜ。五回出ようものなら見世物にする。……」
クルリと板戸を翻えした。
一杯に水藻を冠っていた。
「俺には大概見当が付く、水藻を取ると其下に、小平の死骸があるだろう。生前間男の濡衣を着せ、――世間へ見せしめ、二人の死骸、戸板へ打ち付け、水葬礼――ふん、そいつにしたんだからなあ。だって小平が宜くねえからよ。主人の病気を癒すは可いが、俺の印籠を盗むは悪い」
ダラダラと水藻を払い落とした。
果たして小平の死骸があった。
死骸はカッと眼を剥いた。