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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「なんだって。」

わが子ながら不敵なことをという顔へ、二三子は負けてはいずに、

「だってさ、なにさあれ。くそおもしろくもない小説なんぞかいてさ。わたしいつかよんだけど、ちっともおもしろくなかったわ。」

「それがろくでもないことかよ。生意気いうない、生意気を。」

すると今度はおせいが口を出した。

「おとうさんはね、お安さんのことを義理の妹だって、じまんにしてるんだよ。むかーしさ、お安さんの姉とかけおちまでして夫婦になったっていう間がらだからさ。」

忘れていたことを思い出していうと、二三子はふき出して、

「あらいやだ。ほんとう? おとうさんにもそんな昔があったなんて、うそみたい。見直してあげたいけど、もうだめだ。」

ひやかしとも、侮辱ともしれぬ言葉のあと、

「でもねおとうさん、いくらおもしろくない小説でもさ、小説家なんておっかないわよ。あんまり哀れなかっこうしていったらさ、小説の種にでもされるのが落ちよ。おおこわい。」

兵六さんはもう聞かないふりで、一たんはいた靴をぬぎ、きたない板裏草履とはきかえた。くじいた足のくるぶしがはれているらしく、いたかったからだ。通りへ出て、薬屋へよった。