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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

腹のせいだけではなく、浜子としゃべっているうちに、思いがけなく、安江に泣きつく筋書きができたことでも、彼に一種の自信みたいなものをもたせたらしい。

――ようし、一万は大丈夫だ。まかりまちがって半分としても、御の字じゃないか。一つ、あいつらにたたきつけてやらにゃあ。金でつらはるってやつさ。……いやしかし、みんな出しちゃあいけない。多少は秘密財源というやつをもっとかんとな――

五目そばをたべながら、彼はもうその金をにぎったような気になった。だから彼はいい気になって、

――怪我の功名とはこのことか。へっ、おせいも二三子も、びっくりするぞ。一万円か。お見それいたしましたと一言あいつらにいわさんことにゃ、兵六さんの顔がたたんというもんじゃ。ようし、こんどこそ一つ、うまくやるぞ――

びっこひきひき、兵六さんはにやにやした。音枝や夏樹のおっとりとしたやさしさにあこがれた彼の気持は、今ではすっかり変ぼうして、一万円のとりこになってしまっていた。妻や娘への意地なのだろうか。それが男の意気地だと思っているのだろうか。

安江の家は駅から歩いて十分余りの所にあった。バスにのればふた丁場だ。