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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
夏樹がちょこちょことついていったあと、音枝とふたりきりになると冬太郎は、
「おかあさんの、あんな押しつけ、いやだな、ぼく。」
くやしさが倍になったような口調で音枝にいう。すると音枝は、安江と代ったような姉ぶりで、
「押しつけなんてひどいわ、あれは、思いやりですよ。」
「思いやりなもんか、ほんとは皮肉だよ。」
「そうよ。おかあさん、ちゃんと見とおしよ。わたしにだってわかったもん。」
「なにが。」
「冬坊が、ひっかかったことさ。」
ちょろっと舌の先を出す音枝に、冬太郎は突っかかる調子で、
「ひっかかったかどうか、わかんないよまだ。」
「じゃあわからして。――さ、福神づけのおつりちょうだい。」
「ちぇっ! いじわる。」
冬太郎はポケットをさぐり、
「これ、百円だよ。四五日したらおくってくるよ。」
ぷいっと立った足下に、聞いたこともない人の名をかいた紙ぎれが落ちていた。
音枝はぱらぱらと日記帳をくった。半月ほど前のところに、
千五百円なり(鳥取の詩人)
とかいてあるのを見つけてにっと笑う。安江が、「内じゃあ詐欺費がずいぶんかさむわね。」といったのを思い出したのだ。第一その鳥取の詩人にもユーモアがあった。