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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

新しい地下たびに、巻きぎゃはんのいで立ちも勇しい。三河屋では一家総出で兵六さんを見おくった。町かどにその姿が消えると、三河屋の隠居はいい気もちそうに、

――ほうきはいかがですねほうき、おざしきぼうきにしゅろぼうき……

しかし兵六さんの方はそれどころではない。道ゆく人々がみんな自分の落ちぶれた姿を見つめているように思えて、さっささっさとゆきすぎた。同情にうったえる戦術など、くそくらえと思った。三十分も歩いたろうか。見知らぬ人たちの町へはいっていったのだが、

――ええ、ほうきはいらんかねほうき……

しかし兵六さんの口は全然動こうとしない。一時間たった。二時間たった。ほうきはやっぱり五本であった。こうして兵六さんの一日はくれかけた。

家へ帰るなり兵六さんは、ほうきと一しょに大の字になった。足が棒である。左の肩も凝りかたまっているし、第一、一日中まげていたひじのせいで腕もぬけそうだ。くちびるがかわいて、あつい茶がほしい。腹もへっている。しかし起きて湯をわかす元気がない。こうなると、いかに素っ気なくともおせいが恋しい。おせいがいれば、ぶつくさはいっても茶はのめる。