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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
そのあと子供もできたんですからな。」
「…………」
「さもなければ、金でもつけてもらって、ここの子にするか。」
兵六さんが一言いうたびに安江は悲しくなって何にもいえなかった。さすがに文吉がおこりだして、
「見くびるな鷲さん。馬鹿なこといわないでくださいよ。いいからもう、帰ってください。ぐずぐずしてたら今にあんたをなぐりたくなりますからね。」
理解しがたいという顔で兵六さんは引きさがった。彼は彼で少々立腹していたらしい。ひとりの子供の存在をまるで厄介な品物のようにいったことには気づかずに、年長に向って馬鹿なことをいうなとは何事だと思ったのかもしれない。見おくって出た安江に、笑顔も見せずに、
「どうぞおすきなように。」
部屋へもどると安江は文吉のわきにすわり、
「あーあ、くたびれた。」
と、右手で首根っ子をつかみながら、
「音枝のときは疲れなんて知らなかったと思うけど、今度はしんどいわ。」
「自業自得さ。」
「そうよ、自業自得だわ。かんべんして。今度はわたしが、あんたにたのむ。どうかなと思いながら、そうしないでいられなかったの。だれもかれも、死ねばいいといわんばかりなんだもん。