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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
それが発表されるまでの一と月というものは夜の目も眠れぬほどうきうき、そわそわし、いよいよ発表されてみると、今度は思いがけない難問題にぶつかってしまった。音枝が急に無口になり、ふさぎこんでしまったのだ。彼女はもう女学校二年生になっている。この、いわば犠牲者のことを、安江は大きく考えていなかったのだ。「子守歌」は小説というよりもそれは実話に近く、書きながら安江はその子守歌に酔っていた。それを読んだという文吉の友人たちからも、そういう感想がよせられた。小説の選者の批評にも、やはり同じような意味のことが書かれており、しろうとの面白さとして好意的であった。しかし、そんな中で、酔えない娘がひとりいる。困ったと、安江は心底からそう思う。ひざをまじえて、心ゆくまで語ろうと構えているのに、音枝はいつもそれをはずすのだ。
「音枝はどうも私に敵意をもってるらしいわ。」
音枝の留守のとき、ためいきで文吉に語ると、
「感じやすい年ごろなんだよ。そっとしといた方がいいよ。」
「そうね。でも、私の気持がわかんないなんて、いやだわ。やっぱり……」
ほんとの親子じゃないのかしらといおうとして、心の奥にのみこんだ。