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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
安江は、この、自分に少しも似ない娘がかわいそうでならなくなっていた。自分たち夫婦を父と呼び、母となつきながら、一歩外へ出れば長坂音枝であるふしぎについては、長い年月に彼女は彼女なりの理解でそれを自然なこととして納得していたのだろうに、「子守歌」はその音枝の平穏な魂を荒々しくゆすぶったのだ。
――かわいそうに。しかしいつかははっきり知らねばならなかったのよ、音枝ちゃん……
まだおかっぱのその横顔に無言でいって、安江はほほえみかけながら、にぎった手に力を入れた。泣きじゃくりがいつかやんでいたからだ。音枝もきまり悪げな顔で同じようにえみかえす。そのことまでが、音枝としてはこうするよりほかにぬけ道がないのだと思うと、安江は泣けそうになる。もしも音枝の父親の長坂が、冬太郎の父のようなあり方だったなら、きょうあたり安江の手をふりきって一目散に父のもとへかけこんだろうにと思うと、音枝の哀れさがにぎり合った手からつたわってくるような気がした。
「帰ろうか。」
気をひくようにいってみると、素直にうなずく音枝だった。
「ずいぶん、散歩したね。」
うふっと音枝は肩をすくめた。