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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

柚の大馬鹿

そして、その夜、寝床にはいってから、夫にささやいた。

「子をもって知る子の恩ていったのだれだか知ってる?」

「そんなお人よしはお前ぐらいだろう。」

「有島武郎ですよ。そしたらね、校正刷りで親の恩に誤植してたんですってね。赤インクで子に直しといたらね、出来た本にはやっぱり親の恩――」

「よく知ってんだな。」

「ゴシップみたいとこで読んだのよ。」

「しかし、本当ならそいつは大変な誤植だね。その校正係は、封建主義のかたまりだったんだろう。」

柚の大馬鹿

世帯主 栗本文吉

同居人 小森安江

同   長坂音枝

同   川井冬太郎

一枚の板にならべて書いて玄関の格子戸の上に打ちつけたのはまだ戦争の終らぬころだった。おかみの命令だったか、町会の取りきめだったか忘れたが、とにかく、心のとびらのその奥はさておいてでも、一応はみんな裸になることを要求されて、同じ部屋の下の頭数だけはさらしておかねばならなかったのだ。この四人が四人とも姓のちがった表札を、他人はどうか知らぬが、安江夫婦はおもしろがってながめたこともあった。

「まるで下宿屋だね。」

文吉がそういうと、安江は安江で、ある感慨をこめて、