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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

その顔のあからみはすぐ音枝の傷心への思いやりに移り、後悔にも似た気持がわく。

「グラジオラスのこと、オランダしょうぶともいうのね。」

もう花に気をとられているらしく音枝がいう。

「そうらしいね。何しろ、外国の言葉は、つかわせない政府の方針らしいから、それなんだろう。」

「花にまで?」

「そうじゃないか。お前の女学校だってフェリスがしらゆりになったし、サン女学校は日の出女学院って変ったじゃないか。」

「あ、そうか。」

「今にお前、どんな世の中になるか知れやしないよ。――うちでは女の子でよかったようなものの、よそさまには男の子が一ぱいいるものね。」

「うちだって冬坊がいるじゃない?」

「冬坊までには、間があるけどさ。」

そこで思わず、足が早まったのも、おたがいに冬太郎の泣き声を思い出したかららしい。カリントウをみやげにして家へ帰ると、冬太郎はもう眠っていた。文吉は多少の不満を、音枝の顔をみた安心の中にとけこませながら、

「困ったよ。おれの胸の中に手を入れやがるんだからねあいつ。それでも、おれのねんねころいちで眠ったよ。たった今ねたばっかりだ。」

安江はふっと涙ぐんだ。