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ざつぶんてきざつぶん

雑文的雑文

伊丹 万作

「中央公論」1934(昭和9)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,835 字 · 18 页

青空文庫

という事実をも認めなければならない。

ところが厳密にいえば日本のトーキーはまだ始まつていないのである。したがつて今から日本のトーキーがつまらないといつて騒ぐのはあたかも徳本峠を越さない先から上高地の風景をとやかくいうようなものである。

しかしともかくも現在の状態ではつまらないというなら、それは一応の事実として受け取れる。この一応の事実がよつてくるところを少々考えてみよう。

「めつたに感心するな」ということは、現代の紳士がその体面を保つうえにおいて忘れてはならない緊要なる身だしなみの一つである。これは何もいまさら私が指摘するまでもなく、いやしくも現代の紳士階級の一般心理に関心を持つほどのものならだれしもがとつくの昔に気づいている現象である。

「感心をしない」ということは、昔は「感心をする」という積極的な心理作用の反対の状態を示すための、極めて消極的な影の薄い言葉にすぎなかつたはずであるが、現在では「感心をしない」ということ自身が独立した一つの能動的心理作用にまで昇格してしまつた観がある。

現代の紳士たちは感心しないことを周囲からも奨励されると同時に自分自身からも強要されているわけである。