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ざっとう

雑沓

宮本 百合子

「中央公論」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页

青空文庫

と改めて紹介したりした。泰造が吉本の家庭の様子などを、いつとはなし地になっている社交的な口ぶりで訊ねると、吉本は、滑らかな調子で、別にばつをわるがりもせず、一定の社会的地位が対手に推察されるように、要領よい返答を与えている。

瑛子には、順二郎のこの交友が気に入っている、それは瑛子が吉本の一寸した言葉にも愉快そうに笑う、その華やいだ調子で分るのであった。

女中が、そこへ入って来た。丁度宏子のよこのところへ膝をついてとりついだ。

「奥様、ただいま築地の雄太郎さんがお見えになりましたが……」

「あなた」

瑛子が、いかつい声になって云った。

「雄太郎が来ましたそうですよ、この間っから云っている学費の明細書を、今度こそ出すようにおっしゃって下さい。ようございますか?」

そして、こっちへ向いたまま、

「日本間へ通して」

と云いつけた。

「ほんとにどこでもいろいろな身内の厄介がありましてねえ。――おうちなんかでもお世話でしょうねえ」

吉本は、きちんと坐ったままただ笑っている。程なく紅茶茶碗を一つだけ盆にのせ、お砂糖を、と入って来た。その茶碗を瑛子が見た。

「おや、レモン入れたのかい?」