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ざっとう

雑沓

宮本 百合子

「中央公論」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页

青空文庫

そういう界隈にまでは、塾の鐘の音も響かないのであった。

二日の休みの後なので、月曜は、どことなくちがった気分がある。発音記号での書取りの時間に、宏子はその機械的な録音作業をいつもより沢山間違えた。

「ミス・加賀山、私はあなたがもっと注意ぶかく出来るのを知っていますよ」

栗色の服を着たミス・ソーヤーに云われた。時間が終ると、隣りの席にいる杉登誉子が、

「あんた、きょう青い月曜日ね」

小さく赤い唇で、秋田訛を云った。宏子は、唇をへの字のようにしてうんうんと頷き、連立って図書室の方へ行った。廊下の突当りの迫持窓から一杯の西日がさし込んでいる。そこで、はる子を中心に三四人かたまっていた。

「あなたどこんところ使うの? かち合っちゃうと駄目だから」

「あら、私そこをねらってたのに……」

「ふ、ふ、ふ、ふ」

ぷっつり切った髪の切口を青いスウェータアの背中で西日にチカチカさせながら、忍び声をして押しあっている。宏子が近づくと、はる子は黙って手にもっていた本の表紙を伏せて見せた。何とかいう文学士の「詩歌にあらわれた自然観」という題であった。宏子は首をすくめた。

学生に一番苦手なのは英作文の宿題であった。