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おしゃく

雛妓

岡本 かの子

「日本評論」1939(昭和14)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,482 字 · 53 页

青空文庫

でも、こんなことしていて、真面目なお嫁さんになれるか知ら――それが」

言いさして、そこへ、がばと突き伏した。

逸作はわたしの顔をちらりと見て、ひょんな顔を深めた。

わたくしは、いくら相手が雛妓でも、まさか「そんなこともありません。よい相手を掴まえて落籍して貰えば立派なお嫁さんにもなれます」とは言い切れなかった。それで、ただ、

「そうねえ――」

とばかり考え込んでしまった。

すると、雛妓は、この相談を諦めてか、身体を擡げると、すーっと座敷を出た。逸作は腕組を解き、右の手の拳で額を叩きながら、「や、くさらせるぞ」と息を吐いてる暇に、洗面所で泣顔を直したらしく、今度入って来たときの雛妓は再びあでやかな顔になっていた。座につくとしおらしく畳に指をつかえ、「済みませんでした」と言った。直ぐそこにあった絵団扇を執って、けろりとして二人に風を送りにかかった。その様子はただ鞣された素直な家畜のようになっていた。

今度は、わたくしの方が堪らなくなった。いらっしゃいいらっしゃいと雛妓を膝元へ呼んで、背を撫でてやりながら、その希望のためには絶対に気落ちをしないこと、自暴自棄を起さないこと、諄々と言い聞かした末に言った。