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あめとこども

雨と子供

宮本 百合子

「読売新聞」1926(大正15)年9月22~24日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,204 字 · 7 页

青空文庫

間に、長方形の空地があった。その空地は、家々が茅屋根をいただいていた時分でなければないような種類の空地であった。三方建物の羽目でふさがれ、一方だけ、裏庭につづいている。裏庭と畑とは木戸と竹垣で仕切られている。

その時分、うちは樹木が多く、鄙びていた。客間の庭には松や梅、美しい馬酔木、榧、木賊など茂って、飛石のところには羊歯が生えていた。子供の遊ぶ部屋の前には大きい半分埋まった石、その石をかくすように穂を出した薄、よく鉄砲虫退治に泥をこねたような薬をつけられていた沢山の楓、幾本もの椿、また山桜、青桐が王のように聳えている。畑にだって台所の傍にだって木のないところなど一つもなかった。木が生えていなければ、きっと青々草が生えて地面を被うている。それだのに、たった一箇所、雑草も生えていなければ木もなくむき出しのところがあった。それは例の、三方羽目に塞がれた空地だ。そこのがらんとした寂しい地面の有様が子供の心をつよく動かした。何故ここだけこんな何もないのだろう。――或る日、子供は畑から青紫蘇の芽生えに違いないと鑑定をつけた草を十二本抜いて来た。それから、その空地のちょうど真中ほどの場所を選んで十二の穴を掘った。