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あめ

雨

織田 作之助

「海風」1938(昭和13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页

青空文庫

秀才の寄り集りだという怖れで眼をキョロキョロさせ、競争意識をとがらしていたが、間もなくどいつもこいつも低脳だとわかった。中学校と変らぬどころか、安っぽい感激の売出しだ。高等学校へはいっただけでもう何か偉い人間だと思いこんでいるらしいのがばかばかしかった。官立第三高等学校第六十期生などと名刺に印刷している奴を見て、あほらしいより情けなかった。

入学して一月も経たぬうちに理由もなく応援団の者に撲られた。記念祭の日、赤い褌をしめて裸体で踊っている寄宿生の群れを見て、軽蔑のあまり涙が落ちた。どいつもこいつも無邪気さを装って観衆の拍手を必要としているのだ。けれども、そう思う豹一にももともとそれが必要だったのだ。記念祭の夜応援団の者に撲られたことを機縁として、五月二日、五月三日、五月四日と記念祭あけの三日間、同じ円山公園の桜の木の下で、次々と違った女生徒を接吻してやった。それで心が慰まった。高校生に憧れて簡単にものにされる女たちを内心さげすんでいたが、しかし最後の三日目もやはり自信のなさで体が震えていた。唄ってくれと言われて、紅燃ゆる丘の花と校歌をうたったのだが、ふと母親のことを頭に泛べると涙がこぼれた。