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あめ

雨

織田 作之助

「海風」1938(昭和13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页

青空文庫

ガレーヂの二階で低い天井を睨んで寝ていたが、肺と知って雇主も困り、

「家があるんやったら知らせたらどないや」

待っていましたとばかり、母親に手紙を書いた。不甲斐ない人間と笑ってください。どうせ今まで何一つ立派なこともしてこなかった体、死んでお詫びしたくとも、やはり死ぬまで一眼お眼に掛りたく……。最後の文句を口実に、自嘲しながら書いた。さっそくお君が飛んでくると思っていたのに、速達で返事が来た。裏書きが毛利君となっており、野瀬君でないのに、はっと胸を突かれた。行きたいけれど行けぬ。お前に会わす顔のない母です。恨んでくれるな。腑に落ちかねる手紙だった。手紙と一足違いに意外にも安二郎が迎えに来た。

安二郎の顔を見て、豹一は呆気にとられてしまい、しばらくは口も利けなかったが、

「じつはお前の母親のことやが……」

と、わざとお君とも女房とも言わずに話しだした安二郎の話を聞いて、事情がわかった。

安二郎の話によると、集金人の山谷はお君を犯したのだった。豹一が家出してからのお君の空虚な心に山谷が醜くつけこんだと、豹一にも想像がつき、聞くなり悲しく顔が歪んだ。しかし、安二郎の表情はもっと歪んでいた。