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あめ
雨
織田 作之助
「海風 第四巻二号」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 页
/\と笑っていた。豹一は側に寝そべっていたが、いきなりつと体を起すと、きちんと膝を並べて坐り、その上に両手を置いて、徳田の顔をじっと瞬きもしないで見つめ出した。その視線に徳田は年齢を超えて挑みかゝっている敵意を見て何か圧倒されるような気がした。やがて彼は自分の内気を嘲りながら帰って行った。路次の入口で徳田が放尿している音をきゝながら、豹一はごろりと横になった。
そのとき豹一は七つ、早生れの、尋常一年生であった。学校での休憩時間にも好んで女の子と遊び、少女のようにきゃしゃな体や色の白い小ぢんまり整った顔は女教師たちに可愛がられていたが、自分の身なりのみすぼらしさを恥じているようであった。はにかみやであったが、一週間に五人の同級の男の子が彼に撲られて泣いた。子供にしては余り笑わず、自分の泣き声に聞惚れているような泣き方をし、泣き声の大きさは界隈の評判で、やんちゃん坊主であった。路次の井戸端にまつられた石地蔵に、ある時何に腹立ってか、小便をひっかけた。お君は気の向いた時に叱った。
近くの長願寺の住職はお人善しの老人であったが、無類の将棋好きでこと将棋に関するとまるで人間が変り、助言をしたと言ってはその男と一週間も口を利かず、奇想天外やといって第一手に角頭を八六歩と突くような嫌味な指し方をしたり、賭けないと気が