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ゆきくるまえのこうげんのはなし
雪くる前の高原の話
小川 未明
「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页
どこへなりと飛んでゆこうと思えばいけたからです。けれど、やはり、彼は、古巣のかかっているところを恋しがっていました。
夏のはじめの時分には、どんなに、自分たちは楽しかったろう。このあたりは、自分たちの朗らかに歌う唄の声でいっぱいであった。そして、紫や、赤や、青や、黄や、白の美しい花たちは、いずれも自分たちの姿をほめはやしたものだ。そして、すこしでも長く、自分のところにいてもらいたいと願ったものだ。しかし、もう、自分たちの仲間は散ってしまった。美しい花は、とっくの昔に、なくなってしまった。けれど、なんで、もう一度ああいうことがこないといえよう……。はちには、こんなことも空想されたのでした。
太陽が、だんだん方向を変えて、レールの上がかげり、地の上が冷たくなって、下の枝には終日、日の当たらないことがあるようになってから、彼は、高い枝にからんだ、つたの葉に止まっていたのでした。いつしか、そのつたの葉もまた赤く色づいてきたのであります。しかしやさしいつたの葉は、自分のやがて散ることも忘れて、つねに、はちを慰めていました。
「もう、じきに太陽が上がりますよ。