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ゆきのやどり

雪の宿り

神西 清

「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页

青空文庫

その厳しいお躾けを学衆の中には迷惑がる者もおりまして、今義堂などと嘲弄まじりに端たない陰口を利く衆もありましたが、御自身を律せられますことも洵にお厳しく、十七年のあいだ嘗てお脇を席におつけ遊ばした事がなかったと申します。この御警策の賜物でございましょう、わたくし風情の眼にも、東福寺の学風は京の中でも一段と立勝って見えたのでございます。されば他の諸山からも、心ある学僧の一慶様の講莚に列なるものが多々ございました。その中には相国寺のあの桃源瑞仙さまの、まだお若い姿も見えましたが、この方は程朱の学問とやらの方では、一慶さま一のお弟子であったと伺っております。

このお二方はよく御同道で、一条室町の桃花坊(兼良邸)へ参られました。そのお伴にはかならず松王様をお連れ遊ばすのが例で、御利発な上に学問御熱心なこのお稚児を、お二方ともよくよくの御鍾愛のようにお見受け致しました。わたくしが桃花坊へ上りました後々も、一慶さまや瑞仙さまが奥書院に通られて、太閤殿と何やら高声で論判をされるのが、表の方までもよく響いて参ったものでございます。そういうお席で、お伴について来られた松王様が、傍らにきちんと膝を正されて、易だの朱子だのと申すむずかしいお話に耳を澄ましておられるお姿を、わたくしどももよく垣間見にお見かけしたものでございまし