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ゆきま
雪間
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第五十六号」1957(昭和32)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,817 字 · 24 页
奇妙なかたちで結びついている三人の関係を説明すれば、おのずから疏通することもあるのだろうが、進んで申述したいような事柄でもなかった。
「二人は私の友人ですが、偶然に銀座なんかで出逢えば、いっしょにお茶を飲むとか、酒を飲むとか、その程度の交際で、深いことはなにも知りません。これは真実です」
署長は狼狽している伊沢の心の中を見透したような顔で、苦笑しながらうなずいてみせた。
「ここは法廷ではないから、真実などという言葉をおつかいにならなくとも結構です。警察に代わる保護者としてあなたを指名されたので、どういう関係にあられる方なのか、ちょっとおたずねしただけです……いまも申しましたように、われわれには、笠原さんの奥さんが感じていられるような不安というものは想像できませんのでね……ここへお呼びしますから、どうかお連れねがいたいのです。興奮していられるようですから、その辺のところも、どうか」
庶務の警官を呼んで署長がなにかささやくと、間もなく衝立の間から、黒のスーツに馴鹿の黒いハンドバッグを抱えた安芸子が、昂奮に蒼ざめて、唇をふるわせながら、入ってきた。
「伊沢さん、すみません……あなたにご迷惑をかけるつもりはなかったんだけど、警察では面倒を見きれないというもんだから」