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せつま
雪魔
海野 十三
「東北少国民」河北新報社、1946(昭和21)年3月~9月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,355 字 · 27 页
魔神は見えるかい」
「いや、今日は出ていないや」
雪はやんでいた。見とおしはよかった。地蔵の森の木立も、硝子にとおしたように、はっきり見えていた。なるほど、五助のいう魔神らしき怪しい影は何も見えなかった。
「今日は足跡もついてないや」
五助は、森の前を通り抜けるときに、そういった。彦太は笑った。しかし五助は笑わなかった。
それから一里の苦しい雪の山道が始まった。折悪しく急に風がかわって、粉雪が渦をまいて落ちだした。いよいよ吹雪になるらしい。二人の少年は、道の真中に立ちどまって、魔法壜からあつい茶をくんで呑み、元気をつけた。それからまた雪道へ踏み出した。
二時間あまりの苦しい登山がつづいた。二人の少年は、全身汗にまみれ、焼けつくような熱さを感じた。
「五助ちゃん。まだ兄さんの雪穴までは遠いのかい」
彦太は、雪になれていないので、ややへばったらしい声を出した。
「もうすぐだ。あそこに峯が見えているだろう。あの裏側だから、そこの山峡を過ぎると、観測所の雪穴が見え出すよ」
彦太は返事の代りに、重い首を振った。
そのときであった。とつぜん四、五発の銃声が聞えた。どどん、どんどんと、はげしく雪山に響いた。