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せつま

雪魔

海野 十三

「東北少国民」河北新報社、1946(昭和21)年3月~9月号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,355 字 · 27 页

青空文庫

森の前を通り抜けるとき見たのはそれだけだった。

五助は、そこを抜けると、お雪をはげまして、急に足を早めた。一刻も早く、その気味のわるい森から遠ざかりたいためだった。何もしらぬお雪は、五助の早足を恨みながら、息を切らしてついてきたという。

それからまた一里ばかり山を入って、兄一造のこもっている雪穴についた。五助はあのことを早く兄に話をしたく思ったが、妹がいるのでそれをいいかねた。帰りぎわになってやっとその機会が来た。一旦道へ出た五助は、忘れものをしたように装いながら、雪穴へ引返して、兄にその魔神を見た話をしたのだ。

一造はその魔神の話を一笑に附した。第一地蔵の森は、青髪山よりずっと下にあること、またその足跡と見えたのは、雪を吹きつけた風の悪戯であること、それから雪の中では眼が変になって、よくそうした青いものを見ることがあることなどをあげて、それは青髪山の魔神ではないと結論したのだった。せっかくの一造の説明も五助の疑惑をすっかり払うほどの力はなかった。――まあ、こういう話だった。

「彦くん。いよいよ来たよ。地蔵の森だ」

五助が叫んだ。

「ああ、地蔵の森か。