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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
それがこの三月にひょっとすると船が換るかも知れませんので、早川さんに一時の融通を頼んでいたのです。が拒絶されその上私が前に、お借りしていた千円ばかりの金も、すぐ返済しろというのです。私と、早川さんの中で、千円や二千円の金の事はどうでもないと思っていました。相当の事を私は早川さんにやってきたつもりです。それにかかわらず、すぐ返済しなければ私の事を会社に密告すると、いい出したものですからついかっとなって……」
「デレッキを掴んだ!」
「え! とんでもないです。それや早川さんの死ぬ事は、誰だって願っていますが……本当に、誰か縊める人があれば足位引っぱって手伝いするでしょうが……」と彼は苦っぽく笑った。
「じゃ誰が殺した?」
「…………」
「望月は夜中に君が、あのドアから出て来たといっているんだがね」
「そ、それは望月君が何かためにする事があっての証言ではないんですか?」
「だって君は会社の金を使い込んだという外、よからぬ商売をやっているんだろう。密輸入品を……魔薬のような……」
「…………」
「それを知っている早川を君はこの際、沈黙させるには良い機会ではないかね。望月にも相当な動機はあるし、五十嵐だってあの夜早川と争いをやっている。