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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
(五)雪
三十分もするとその返事がきてそれには二つとも、
「一時二十五分より三十七分迄薄く降雪あり」と明記されてあった。
警部の顔にはうれしさが、こみあげてきた。やっと一つの糸口を見つける事が出来た。警部は苦労がむくいられる気がした。
警部は早川家に電話をかけて、あの夜伊東、五十嵐、望月三人のうちの誰が洋服でいたかを出向いている刑事にたしかめさせた。洋服を着ていたのは伊東だけだった。
警部は満足して山の社宅に帰った。そして会社の試験室に電話をかけてあの夜の最低温度を記録の中から捜してもらった。幾つものその表を見ながら、予期した数字を知り得た警部は今度は妙な事をはじめた。防寒具を念入りに着こんで、火の気を断った、会社の試験室に、泊り込みに出かけた。そしてチビリチビリと洋酒の杯をなめながら、ランプと時計とをにらめていた。
そして彼の得たもの――
それはあの夜、現場のランプには誰も手を触れやしなかった――いい換えれば、ランプを消した者は――誰もいなかった。という事実であった。
(五)雪
次の日はよく晴れた、そして暖い日だった。
珍しく軒から、雪融けの水が、シズクになって、氷柱を伝って、ぽたぽたと落ちていた。