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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
でいい換えると、早川はランプの消える前、すでに死んでいたと結論したのです」
「……そのストーブの燃えていなかった事を、証明する事実があります。尠くとも十二時頃にはもう灯は消えていたのです。それはあの日、あさ婆さんの運んで置いた薪の量と、残っていた数から帰納して、燃えていた時間を引いて見ると、その答えが出て来たのです。
それは、被害者が、もう書庫を出ようとして、薪を入れなかったものだと、私は思うのです。そして有難い事には、それを裏書きしてくれる事実があった事です。それはこの報告です」
警部は、あの日の外廻りの状況報告書を皆の前に拡げた。
「煙筒に薄雪がありました。あの日の雪は、十時すぎに一度止んで又一時半頃にうっすら降っています。その薄雪が、煙筒の上に消えずに残っていたという事は……その煙筒が完全に、その時は冷え切っていたという事なのです。尠くとも一時間以上前から、火の気がなかったと、見るべきではないでしょうか。で、私はそれ等から演繹して、あの惨劇は、十二時前後に、行われたものなりと断定するのです。
としますとそこに、今迄完全に不在証明のあったと、信じられていた山村常顕もまた、犯人の一人として、浮び上って来るではありませんか」