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うんなんしゅびへい

雲南守備兵

木村 荘十

「新青年」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,859 字 · 76 页

青空文庫

大勢の母親達がこれを見たら、何と云って泣き叫ぶだろう”

彼の怒りは、もう、習慣などというものを越えて、心の底に凝結してしまったのだろうか。

例の鋭い眼を据えて考え込み、飯店の亭主が出て来てしきりに詫をいうのも聞き流して、真青な顔をして飯店を出た。

灰色の低い雲が、空一杯にかぶさっている箇旧の街は、もう暮れかかっていた。

「兄さん」

春生は、背後の跫音に気兼して小さな声で云った。

「何処へ行くの?」

「とに角、どっかでお前の着物を買わなくちゃア……春生、お前、足が悪いのか」

「何でもないんだ……膝のところが少しはれているけれど、もう鉱山へ入りゃアしないから直き癒るよ」

弟は、兄を心配させまいとして、平気で歩こうとし、兄は弟を抱えるようにいたわり乍らゆっくり歩いた。

「兄さん、あたい、着物なんかいらないや」

「何故? そんな恰好をしてると、またさっきの様な目に遭うぞ」

「でも、あたい一人になったら、どうせ、又誰かに奪られてしまうもの」

「なに、着物まで剥がれたのか?」

「うん、あばたの劉ってやつに金を貰ったとき、お母さんが買ってくれたのを大事に持っていたんだけど……鉱山を下りて箇旧へ来る途中で……」