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きりをけすはなし

霧を消す話

中谷 宇吉郎

「思想」1945(昭和20)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页

青空文庫

「濃霧季節に始まったアルデンヌ地方のルントシュテット攻勢を阻止すべき命を受けた多数の重爆機がまさに飛行場に着陸するところであった」「突然滑走路に沿いメラメラと火焔が衝立のように立昇った。数分後に黒煙が霽れ始めた。同時に霧もまた霽れ始めた」という。これは石油を霧吹きで吹き出して点火する時の記述とみることが出来よう。

こういう記事がなくても、今の目的には、即ち大量の熱気を送り出し、その全体の熱量さえ多ければよいという場合には、石油を完然燃焼させて、その熱排気に空気を混じて送り出すというのが一番悧巧な方法である。

多分そういう方針の下に、すぐハンプシャー州の飛行場に中規模の装置を作ったのである。そして天然霧についての第一回の成功が得られたのは、十一月四日のことであって、チャーチルの声明後二カ月も経たないうちである。

「いやに寒い或る冬の真夜中、閣僚、気象学者、科学者、陸軍並びに空軍の将兵達は、温かい床から呼び起され、冷たい霧をもとめて飛行場へ急行した」「この日の払暁、石油による焼払装置で、約二百平方ヤード高さ八十フィートの地域にあったハンプシャーの視界五十ヤードの濃霧が消散したのだ」