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きりをけすはなし
霧を消す話
中谷 宇吉郎
「思想」1945(昭和20)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页
六月二十九日の同盟通信海外電報版によると、英国では一昨年の冬の初めから、飛行場の霧を消すことに成功し、それを実戦に使っていたそうである。
この電報は、六月一日の「ニュース・クロニクル」紙の記事を転載したものである。新聞記事のことであるから、何処まで確かかはわからないが、その内容を読んでみると、かなり精確らしく思われる。少なくもあの報道のとおりに実行すれば、科学的に見て、英国の冬の濃霧も充分消えるであろうと言うことが出来る。
この霧を消すという「英国独特の発明」によって、対独戦を二カ年早く切り上げることが出来たと英紙は言っている。この方は勿論誇張であろうが、或る程度もっともと思われる節もある。というのは、米英軍が昨年の夏ノルマンディーに上陸してから、独軍は枢軸側の期待を裏切って、案外簡単に独仏国境近くまで後退してしまった。独軍が最も得意とする機動作戦への転攻がなかなか現われない。ところが十二月になって、この転攻がルントシュテット攻勢となって出て来たのである。
海岸線からの後退以後、地勢的にみればその機会がたびたびあったはずであるが、この時まで待ったのは、気象的の条件を考慮に入れたものと解釈することが出来る。