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『せいきゅうざっき』をよむ
『青丘雑記』を読む
和辻 哲郎
「帝国大学新聞」1933(昭和8)年1月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,919 字 · 4 页
脱我の立場において異境の風物が語られるとき、我々はしばしば驚異すべき観察に接する。人間を取り巻く植物、家、道具、衣服等々の細かな形態が、深い人生の表現としての巨大な意義を、突如として我々に示してくれる。風物記はそのままに人間性の表現の解釈となっている。特に人間の風土性に関心を持つ自分にとっては、これらの風物記は汲み尽くせぬ興味の泉であった。
著者が故人を語るに当たって示した比類なき友情の表現もまた同様に脱我の立場によって可能にせられている。特に人を動かすのは浅川巧氏を惜しむ一文であるが著者はここに驚嘆すべき一人の偉人の姿をおのずからにして描き出している。描かれたのはあくまでもこの敬服すべき山林技師であって著者自身ではない。しかも我々はこの一文において直接に著者自身と語り合う思いがある。悠々たる観の世界は否定の否定の立場として自他不二の境に我々を誘い込むのである。