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せいしゅん

青春

宮本 百合子

「婦人朝日」1940(昭和15)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,799 字 · 16 页

青空文庫

目白の女子大学には、まだ成瀬校長が存命であって、私が英文予科の一年に入ったときは、ゴチックまがいの講堂で一人一人前へ出て画帳のようなものへ毛筆で何か文句を書かされたりした。私は大変本気な顔つきで、求めよ、さらば与へられん、という字を書いたと覚えている。実践倫理という時間があって、その時間には、大学部の生徒は皆一同講堂にあつまって、成瀬校長の講義をきき、それを片はじから筆記するのであったが、講堂にみちる絶え間ない微風のような字をかく音を超えて、熱気をふくんだ校長の声は盛んに、自由とか天才とかいう言葉を吐いた。

若い心にそれらの響は決して魅力なくはないのだけれども、つまり何が云われているのか、私にはどうしてものみこめなかった。そういう大きい精神の飛躍を示すような声が響いている一方、あすこは本当に妙な女の気持が支配していて、女学校からずっと入って来た人が、外から入って来た生徒に、指導する権利をもっているような風があった。運動会か何かあるというとき、そういう一人の同級生が、私が前髪をわけて髪を結っているから校風に合わない、その髪を直して運動会へ来るように、といった。