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あおふくのおとこ

青服の男

甲賀 三郎

「現代」1939(昭和14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,026 字 · 29 页

青空文庫

「小浜さんはどうして中々金持なんですよ。二年以前に伯父さんの遺産を貰ってね、何でも何十万という事ですよ」

「何十万! そいつア初耳だ。そんな金持の癖にアパートに独り住居してるんですか」

「変ってますからね。厭人病っていうんだそうで。交際が嫌いでね。こゝにいても殆んど訪ねて来る人はありませんよ。あなたはどなたですか」

「望月といいます。つい近頃お知合になったのでして。茅ヶ崎へは何の用で行かれたんですか」

「それがね、可笑しいんですよ。今朝、茅ヶ崎の別荘の管理人から、小浜信造死んだ、遺族に通知頼むってね、私宛に電報が来たんです」

「へえ、どういう事ですか。それは」

「丁度、小浜さんがいましたから、その電報を見せると、カン/\に怒ってね、誰かの悪戯だといって、すぐ返電を打ちましたが、折返し警察から、すぐ来て貰いたいという電報が来ましたので、ブツ/\いいながら行かれました」

「どうしたという訳でしょうね」

「何かの間違いに極ってまさア。当人はピン/\しているんだから」

「可笑しいですなア」

「全く変なんですよ。昨日は一日茅ヶ崎の別荘で待ち呆けを食わされたといいますから」

「昨日も茅ヶ崎へ行かれたんですか」