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あおだけ

青竹

山本 周五郎

「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页

青空文庫

みんなこえをのんだ、いかにも道理のはっきりした意見で反対のしようがない。云いだした直政も言葉に窮して席はしばらく白けわたった。源七郎はじっと俯向いたままだった、心なしか額のあたりが蒼ざめているようにみえた。……結局は兵庫の意見がまさしいと認められた、そして恩賞のことは沙汰なしときまって、評議が閉じられたとき、「源七郎にはたずねることがある、しばらく控えておれ」と直政が云った。老臣たちが退席すると、さらに扈従の者をもさがらせ、源七郎とふたりだけになった直政は、「ゆるす、近うまいれ」と自分も膝をすすめた、「いまそのほうの戦場の覚悟を聞いたのでもうひとつたずねて置きたいことがある、それはたかさき在城のおり、せがれ直孝の宿所へ盗賊のはいったことがある、そのとき直孝がみずから賊を斬り伏せたが、そのほうは手をつかねて見ておった、さようであったな」そう云われて源七郎はまぶしそうに眼を伏せた。……それは二年まえ、井伊直政が上野のくに高崎で十二万石に封ぜられていたときのことだった。かれには直勝、直孝とふたりの子があったが、二男なおたかは庶子で、ある事情のため六歳のときから十三歳まで城外にやしなわれていた。