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あおだけ
青竹
山本 周五郎
「ますらお」大陸講談社、1942(昭和17)年9月
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 14,622 字 · 29 页
七
源七郎はいくさ目付の審問をうけ、軍令にそむいた事実を糺された。退却の命を無視したうえ、部下をほとんど全滅させたからである、しかもその結果としては、前田片桐らに功をなさしめたのみで、井伊軍のためにはなんの役にも立たなかった。軍令にそむいた罪は重い、かれはその場で帯刀をとられたうえ、ただちに彦根へ逼塞を命ぜられた。
七
直孝が彦根城へ凱旋したのは秋八月であった。そこで正式に家臣の恩賞がおこなわれ、終ってから余吾源七郎の審問がひらかれた。直孝じきじきの裁きで、おもだった老臣たちも席に列した。問罪の理由は明瞭である、しかし直孝はどうかして源七郎を助けてやりたかった。守役として十余年のあいだ仕えてきたかれ、寵臣であるのにいつもへりくだって人のうしろに立つようにしていたかれ、目だちはしないが誠実な奉公ぶりにゆるみのなかったかれ、そういうこしかたの源七郎を思うと、いまここで重科におこなうにはどうしてもしのびなかったのである。
「軍令にそむく者は、厳罰だとかねてきびしく触れてある」直孝は噛んで含めるようにそう云った、「そのほう日頃の気質として、それを知りながら犯したとは信じられぬ、もっとも乱軍のなかのことゆえ、伝令を聞き誤るということはありがちだ、そこをよくよく考え、思い違いのないように返答せよ」